身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました～虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで～

　見ると耀の両親は源三の嫌味に苦笑している。きっといつもこんな風に言われ、慣れているのだろう。

（ぜったい、教養が無いのがバレないようにしなきゃ……）

　結乃は伸びていた背筋にさらに力を入れる。

「とにかく、僕は彼女がいい」

「……耀さん」

　都合のいい結婚相手として、ということだと知っているものの、ついドキリとしてしまった。
　でもそこまで見込んでくれるなら自分も耀のためにしっかり役立ちたい。

「あのっ、私。精一杯耀さんの妻を務めさせていただきます。耀さんみたいな素敵な方とご縁があって良かったと思っているんです」

　これは本心だ。共に暮らし始めてまだ数日だが、彼が淡々としながらも決して冷酷ではないことはわかっていた。

　そもそも冷たい人なら祖母が倒れたと聞いて動揺した結乃を病院まで連れて行き、傍にいてくれるなんてことはしない。
　あの時ひとりだったら不安でそうとう取り乱していたはずだ。冷静な彼がいてくれてどんなに心強かったか。
　結乃は彼を人として信頼していた。