身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~

『お祖母さんの入院中にご挨拶する形になり申し訳ありません。ですが、結乃さんを全力で守ることをお約束します』

 当然本当のことは言えないから、かねてからお付き合いしていた人と恋愛結婚することにした。
 ”真摯な恋人”を演じる耀に祖母は心打たれたらしく、病床で婚姻届に署名してくれた。

『いい人と巡り会って良かった。この子の両親も喜びます』と涙ぐむ祖母に結乃は罪悪感を覚えずにはいられなかった。

 日を置かず嵯峨の家にも挨拶に行った。
 伯父と伯母の前で『すぐに一緒に暮らすので婚姻届を出したい』と報告した耀にふたりは大層驚いていたが、嵯峨家にとっては願ってもないことだとあっさりと受け入れられた。

 帰り際に伯母に『上手くやったじゃない。初めて役に立ってくれたわね』と耳打ちされ、結乃は複雑な思いで笑う事しかできなかった。

 そして今結乃は宇賀地家を訪れている。

 嵯峨家を訪れた次の週末である今日、東京屈指の高級住宅街、田園調布の宇賀地家邸宅で結乃は慌てて購入したワンピースを着て彼の両親、そして祖父である宇賀地源三(げんぞう)と対峙していた。

「嵯峨家の長女ではなく姪と聞いているが」