身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~

「……おらんでーず?」

 初めて聞く単語だ。きっとボイルされた卵の上にたっぷりかけられたゆるいマヨネーズのようなソースのことだろう。

「それより結乃。夫婦になるんだから俺のことは名前で呼ぶように」

「えっ」

 いきなり名前を呼び捨てにされドキリとする。
 でも耀の表情からは特に照れや心の揺れは感じとれない。

(それもそうか。私たちはお互いが好きで結婚するわけではないもんね。まずは落ち着いて形から入らないと)

「はい、わかりました……耀、さん」

 頂くお金の分、しっかり勤めを果たすために割り切ろうと結乃は心を決める。

 それでも耀が自分の為に手の込んだ朝食を作ってくれたことが嬉しかった。

「あの、ありがとうございます。こんな豪華な朝食を作ってくださって」

「料理は趣味だから構わない」

 温かいうちに食べろと促されフォークとナイフを持つ。
 この家で初めて食べる朝食は自分史上一番おしゃれで、信じられないほどおいしいものだった。
 

 その後の展開はあっというまだった。

 共に暮らし始めて数日後、祖母の状態が少し落ち着くと耀は結乃と共に病院を訪ね『結乃さんとの結婚をお許しください』と頭を下げた。