訳アリのお見合いから行きがかり上結婚し、この高級マンションに住んでいる。
 愛どころか打算だけのお互い目的をもった期限付きの関係だ。

 しかもお見合いでの印象はこれ以上ないくらい最悪だったはず。
 
 彼にとって自分はこうして過保護なまでに世話を焼くような存在ではない。
 
 結乃は夫、宇賀地(うかじ)耀(よう)の長身の後姿を複雑な気持ちで見送る。
 
 手に感じるのは小さな傷の痛みより、優しく握られた温もりの名残だった。