半年後、結乃は実家の居間に立っていた。

「ずいぶんガランとしちゃった」
 
 やたらと広く感じる部屋の四隅に結乃の声が吸い込まれていく。

 ここは祖母の希望通り売却することになった。すぐに買い手が決まり、一週間前に全ての荷物を出し終えている。
 家屋は近々解体され更地となる為、結乃はこの家との最後の別れに訪れていた。

 結乃はいつも家族で食事をしていたテーブルのあった場所に写真立てを置く。

 その中には結乃と耀がウエディングドレスとタキシード姿で寄り添い微笑む写真が入っていた。

 三カ月前に行われた結婚式の出席者は少人数に押さえられた。
 お互いの親族と友人、結乃は同僚の千香子や清を呼んでアットホームな雰囲気で行われた。

 その後行われた披露宴は耀の立場的に盛大なものになり、結乃は緊張しながらもなんとか役目をこなした。
 どちらにも巧巳以外の嵯峨家の人間の姿はなかった。

 祖母は少し元気になって結婚式に出たいとリハビリを頑張った甲斐があり、予定より早く退院することができた。

 すでに自分の足で歩くことができるようになったが、結婚式では大事をとって車いすで出席した。
 車いすは清と巧巳が交代で押してくれた。