「それなら大丈夫です。耀さんと一緒にいれば、もれなく私は笑顔になっちゃいますから」

 言った先から、幸せの涙が溢れそうになる。
 結乃は耀の胸に勢いよく飛び込み、広い背中にしがみついた。

「耀さん、大好き。私も愛してます」

 耀は結乃の頭を両腕でギュッと抱き込んでから力を抜き顎に手を掛けた。

「結乃、顔見せて」

「だめです、今笑顔じゃなくてヘンテコな顔ですから」

 結乃は上を向くまいと、ぐりぐりと額を耀の胸に擦り付けて抵抗する。

「キスしたい」

「な……っ」

「一週間も離れていたんだ、早く君に触れたい。気持ちが通じたからなおさら止まれない」

「だめか?」と耳元の唇が囁く低い声に結乃の鼓膜が震える。

 普段はキチンとしていて硬い雰囲気なのに、こういう時に急に色気全開になるのは止めて頂きたい。恋愛初心者マークの自分に太刀打ちできるわけがない。

 抵抗を止め、力を抜くのは受け入れるサイン。顎にかかった手で顔がゆっくりと上を向かされる。

 潤んだ瞳で見上げる妻の鼻先で耀は「かわいい」と呟き、そっと唇を重ねた。

「ん……耀さん」

「結乃、愛してる。一生離さないから」

 その夜結乃は、止まらなくなった夫の想いをしっかりと受け取ることになった。