身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~

 その内離れでひとり過ごすようになってもさみしくても泣くこともできなくなった。
 誰も見ていないのに。その頃から見るようになったのがあの夢だ。

「でも、耀さんと一緒に眠るようになってから見なくなったんです……きっと耀さんが傍にいてくれると安心できるからですね」

 初めて結ばれた時、耀は『結乃、今日から君はここで寝るように。そうすれば、辛い夢を見ても俺が傍にいてやれる』と言ってくれた。
 それは祖母から話を聞いた彼が結乃を思いやって出た言葉だったのだ。

「ありがとう……ございます」
「……悲しみは消えないだろうが、隠す必要はない」
 頬を寄せる広い胸から彼の声が優しい振動で伝わってくる。

「でも、もう8年以上経ってるんです」
 
 祖母は結乃が前を向くことを願ってあの家を売る決心をしたのだ。いつまでも自分だけが拘っていたらだめだ。亡くなった両親だって喜ばない。

「時間は関係ない。悲しかったら悲しんでいい」

「でも」

「俺には気を使う必要はない。見合いの時に君にあれだけタンカを切られたんだ。今更だ」

 結乃を抱きしめる腕の力が増した。

「ふふ、今更って……」