身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~

 結乃は導かれるまま頬を彼の逞しい胸に摺り寄せると上から「どうしたんだ、今日は随分甘えるんだな」という声が聞こえてきた。

「嫌、ですか?」

「嫌ではない」

 やや食い気味に返事が返ってきて結乃はくすりと笑う。
 そしてあくまで何気ない様子で話し出した。

「耀さん、私よく夢を見ていたんです――亡くなった両親と最後に話した時の」

 結乃の頭を撫でていた耀の掌が一瞬止まったが、先を促すように再び優しく動き出した。

「出かけたらふたりが事故に遭うってわかっているのに、いつも送り出してしまうんです。何度も何度も同じ夢を見て……」

 あの時に戻ってふたりを止めることができたならと何度考えたことだろう、一緒に行っていたら事故には遭わなかったはずだと自分を責めたこともあった。

 あまりにも突然の別れだったから、感情がついて行かなかった。悲しいのにどうしたらいいか分からなかった。

 とにかく祖父母に心配かけないよう悲しみに蓋をした。嵯峨家に引き取られた後は伯母や亜希奈に『辛気臭い顔をするな』と疎ましがられたので暗い顔はできなかった。