身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~

 病院のエントランスから外に出ると寒風がコートを揺らした。

 結乃は耀が『カシミヤは温かいから』と買ってくれた淡いピンクを基調としたチェック柄のマフラーしっかりと結び直す。
 自分には可愛らしいけれど、これはこれで似合っているような気がする。何より耀が選んでくれたのが嬉しかった。
 
 風は冷たいが、その分こんがらがった思考が少しだけスッキリしてくる気がした。

(耀さんとの幸せ……か。でも、私たちは好き合って結婚した夫婦じゃない。本当の事を知ったらおばあちゃんはがっかりするだろうな)

 耀が祖母を見舞っていたことも、『結乃さんのことは俺が必ず守ります』と言ってくれたことも本当に嬉しかった。

 でも、それは祖母を励ますため。彼の優しさだ。
 自分を好きだとか愛しているからではない。

(そう思うと、切ないし、さみしいって思っちゃうこと自体、私……)

 もうこのどうしようもなく自分勝手な気持ちの正体は分かっていた。

 ふうと、溜息をつくとバックに入れていたスマートフォンが振動し、着信を告げた。立ち止まって取り出して見ると画面には従兄の名が表示されていた。