「調査の結果、やはりというか結乃さん嵯峨家で大事にされてなかったみたいですね。ひとり離れに追いやられて最低限の生活費しか渡されていなかったようです。大学の費用だけは出して貰えたようですが」

 秘書の言葉に耀の眉間に深いしわができる。

「両親を亡くしてすぐの女の子をひとり離れにだと?」

「専務、その顔怖すぎるんで、絶対結乃さんの前でしちゃダメですからね……でも確かに酷い扱いだ」
 
 結婚の挨拶の時一度だけ結乃と嵯峨家を訪れているが、伯母も、婿養子の伯父も宇賀地家への媚びばかりで嫁ぐ姪への愛情は感じられなかった。

 しかし結乃は『伯母さんには大学の費用出してもらったんです』と感謝を口にすることはあっても、嵯峨家への悪口は聞いたことはない。

「そんな扱いをするくらいなら、なんで祖父母がいる高校生の後見人になったりしたんだろうな」

「そうなんですよね。スッキリしないんで、もうちょっと詳しく探ってみます」

 手元のファイルを眺めながら思案していた湊は「そういえば」と思い出したように付け加えた。

「嵯峨家の長女の亜希奈さん、男と別れたみたいですよ」