「ちょっと、鏡見てくるね」
私はそう言って教室を出た。
廊下を歩いていると、通りかかった人たちがすれ違いざまに私の方を見てる。
見られてるのが恥ずかしくて、小走りに鏡がある階段の踊り場へ向かう。
その途中で、反対側から歩いてきた人にぶつかりそうになってしまった。
「ごめんなさ……」
言いかけて、ハッとした。
「咲姫?」
ぶつかりそうになったのは、日生くんだったから。
「アリスの衣装、届いたんだ」
「……うん」
日生くんが私の姿を見て言った。
恥ずかしいから、あまり見ないで欲しい。
と思っていたら、
「咲姫はアリスよりチェシャ猫だと思うけどな」
日生くんが呟いた。
「え?」
「だって仔猫ちゃんだろ?」
夏休み前と同じように気さくな笑顔で言う。
ダメだよ。そんな風に優しく笑わないで。
ドキドキが止まらなくなるから。
好きって気持ちが強くなっちゃうから。
あきらめられなくなるから。
「日生くん知らない?」
少し離れたところから伊吹ちゃんの声が聞こえて、我に返った。
きっと日生くんが教室にいなかったから戻って来たんだ。
