「ありがとうございます」
夏川くんは平然とした様子で笑顔でお礼を言っている。
お母さんが先に階段を降りていく音を聞きながら、
「下、行こうか」
恥ずかしさと気まずさで夏川くんの顔が見れずに私も部屋を出ようとした時。
突然腕を掴まれて引き寄せられたと思ったら、唇に一瞬触れたぬくもり。
「チョコじゃなくて伊吹のこと食べたくなった」
「……っ」
「顔真っ赤」
「だって……!」
せっかく頑張って作ったチョコをからかわれたと思ったら、名前呼びしたりキスしたり、そんな甘い言葉を言ってきたり、不意打ちばかりで心臓に悪いよ。
――でも、そんなところが夏川くんらしいのかな。
「爽のバカ!」
わざとそう言って、さっさと部屋出て階段を下りる。
「ちょ、バカってなんだよ」
慌てて私を追いかけてくる夏川くん。
こんなやりとりがたまらなく嬉しくて幸せだと思えた。
