その他大勢になんかモテなくていい。
ただひとりでいい。好きな人に好きになってほしい。
ただそれだけなのに。
咲姫が羨ましい。
好きな人に好かれていて。
夏川くんにもあんなに想われていて―……。
「伊吹ちゃん!」
突然後ろから名前を呼ばれて振り返ると、
「咲姫?」
走って追いかけてきたのか、息を切らした咲姫が目の前にいた。
「ねぇ、伊吹ちゃん、私、何かした…? 何かあるなら話してよ……」
泣きそうな表情で言う咲姫を見て、胸が痛んだ。
咲姫は悪くない。
悪いのは、咲姫に嫉妬して八つ当たりした私だ。
「違うの。咲姫は悪くない」
「伊吹ちゃん?」
「夏川くんはまだ咲姫のこと好きなのかなって思ったら、つい……」
「もしかして伊吹ちゃん、爽くんのこと……」
咲姫が言いかけた言葉に私は無言で頷いた。
私はいつの間にか咲姫に嫉妬するくらい、夏川くんのことが好きになっていたんだ。
