天然クール王子は仔猫ちゃん溺愛中。


だって、夏川くんはずっと咲姫のことが好きだったのに。

去年、咲姫は夏川くんとつきあってたのに。

そんなこと言われても……。

咲姫にとっては過去でも、夏川くんにとってはまだ過去じゃないんだから―。

「もう、そういうこと言うのやめてよ」

思わずキツイ口調で言葉にしてしまった。

言った瞬間しまったと思ったけど、もう遅い。

「…伊吹ちゃん…?」

不安そうな表情で咲姫が私の方を見た。

「ごめん。私、先に教室戻るね」

すでに食べ終わっていた私は、気まずさから逃げるように慌てて席を立って食堂を出た。

予鈴まではまだもう少し時間がある。

ひとりになりたくて、教室とは反対の方へ歩き出した。

―どうして?

どうして咲姫なんだろう。

日生くんも、桐生くんも、夏川くんも。

みんな、私のことを好きになってはくれない。

「美人だね」とか「綺麗だね」とか、欲しいのはそんな言葉じゃないのに。

外見だけ好かれて告白されたって嬉しくなんかない。