天然クール王子は仔猫ちゃん溺愛中。


【Side 咲姫】


「もう、信じらんない!なんでいきなりみんなの前であんなこと言うの!?」

コンテスト終了後。

人目を避けるようにして向かった校舎裏で、私は思わずそう叫んでいた。

「悪かったよ。でも、ああするしかないと思ったんだ」

「でもだからって…」

ほぼ全校生徒がいる前で言わなくたっていいじゃない!?

明日からまたみんなに大騒ぎされることを考えると、今から憂鬱だ。

「そんなに嫌だった?」

不安そうな表情で私の顔を覗きこみながら玲央が訊いてきた。

「……嫌……じゃ、なかったけど…」

久しぶりの至近距離にドキッとして、慌てて俯きながら答える。

ホントは、すごく嬉しかったよ。

だけど、あんな風にみんなに騒がれたり注目されるのは恥ずかしいんだ…。

「けど…何?ホントは桐生に優勝してほしかったとか?」

でも玲央は別の意味にとらえたらしく、怪訝そうな表情で言った。

「そんなわけない!玲央に優勝してほしいと思ってたよ!」

慌てて首を横に振って否定したけど、

「ホントに?」

玲央はまだ疑いの眼差しを私に向けている。

「ホントだよ。だって、玲央と別れるなんてイヤだもん…っ」

言いながら、涙が溢れてきた。

ホントは、玲央が桐生くんに負けたらどうしようってすごく不安だった。

もしかしたら、玲央はこのままもう私と別れるつもりなのかなとか。

もう私のこと好きじゃなくなったのかなとか。

そんなマイナスなことばかり浮かんできて、怖かった。

玲央と離れてる間、ずっと寂しかった。

話したいけど、やっぱりあの日のことを思い出すとどうしたらいいかわからなくて。

好きなのに、すれ違ってばかりなのが辛かった。

「夏休みのこと、ホントごめん。俺、マジで余裕がなかったんだ。咲姫のこと、桐生にとられたくなかった。
咲姫の気持ち考えないで…悪かった」

玲央が真剣な表情でそう言ってくれた。

「…私…玲央のこと…ホントに好きなの。でも、まだ怖くて…」

涙声で言う私に、

「うん。咲姫が大丈夫って思えるまで待つから」

玲央が優しい口調で言ってくれた。

「この前佐神にめちゃ怒られたんだ。“あんた、彼氏としてサイテー”ってさ」

「流風ちゃんに?」

「“今度あたしの大事な咲姫泣かせたら1発殴る”って。咲姫は佐神のじゃないっつーの」

その言葉が流風ちゃんらしくて、私は思わず笑ってしまった。

流風ちゃん、そんなこと言ってくれたんだ。

「でも、あいつ、咲姫のことホントに心配してた。友達思いのいい奴だよな」

「…うん…」

ありがとう、流風ちゃん。

私、いつも流風ちゃんと伊吹ちゃんに支えてもらってるね。

明日、流風ちゃんと伊吹ちゃんに会ったら、「ありがとう」って伝えよう。

私には、こんなに私を大切に想ってくれている人達がいるんだ。

だから、私も、大切にしていきたい。

心からそう思えた。