今、周りには誰もいない。
もっと咲姫に近づきたい。
もっと咲に触れたい。
「……咲姫」
名前を呼んで、つないでいる手を強く引き寄せた。
そのまま咲姫と向き合う。
手を伸ばせばすぐ触れられる距離。
そっと咲姫の頬に触れて、瞳を見つめる。
そのまま唇に触れようとした時、咲姫が急に顔を背けた。
「……ごめん……」
咲姫が小さな声で言った。
「咲姫は俺のこと好き?」
「……え?」
俺の問いに、咲姫は戸惑ったような表情を浮かべた。
ずっと気になってたこと。
俺とつきあい始めてから、咲姫は一度も俺に“好き”って言ってくれたことがない。
それに今日だけじゃなくて放課後一緒に帰ってる時も、心ここにあらずって時があった。
ホントは聞くまでもない。
それでも俺は…ウソでも一度でいいから“好き”って言葉が聞きたかったのかもしれない。


