咲姫は、間違いなく最初に俺の名前を呼んだ。
それだけで嬉しいと思ってる自分がいる。
咲姫には夏川がいる。
俺には美原がいる。
でも、やっぱりこれ以上自分の気持ちにウソはつけない。
ふわふわの髪。あどけない寝顔。
全てが可愛く思えて。
俺は咲姫の唇に自分の唇を重ねた。
* * *
咲姫を保健室に連れて行ったあの日からずっと、咲姫の言葉が気になってる。
きっと本人は覚えてないだろうし、ただの寝言なんだろうとは思う。
でも、もしもあれが咲姫の“ホントの気持ち”だとしたら―?
都合のいい解釈だってことはわかってるけど、心のどこかで期待してる自分がいた。
「……日生くん?」
美原に声をかけられて、我に返った。
今は美原と一緒に帰っているところ。
「どうしたの?」
美原が不思議そうな顔で尋ねた。
話すなら、今かもしれない。
あの日、はっきりわかったんだ。
もう自分の気持ちにウソはつけないってこと。



