咲姫は俺のファンから騒がれるのがイヤだから堂々と言わないでほしいみたいだけど、言いたいやつには言わせておけばいいんだ。
俺は陰でコソコソっていう方が嫌いだし、面倒だから。
放課後。
俺は咲姫と一緒に帰り道を歩いていた。
もう冬を感じさせる冷たい風が吹いている。
「…寒っ…」
隣でそう呟いた咲姫の手に触れて、
「手、冷たいな」
そう言って、そのまま手を繋いで歩く。
すれ違う人たちが、時々俺達を微笑ましそうな視線を向けている。
こうして、少しずつ幼なじみから恋人になっていければいい。
咲姫の小さな手の温もりに、小さな幸せを感じていた。
この時の俺はやっと想いが叶ったことが嬉しくて、ひとりで舞いあがってた。
それが、ほんの一瞬の幸せだと気づかずに。
