天然クール王子は仔猫ちゃん溺愛中。


「アリスの衣装、届いたんだ」

改めて咲姫の姿を見る。

いつも制服姿しか見てないから、なんか新鮮だ。

「……うん」

咲姫が恥ずかしそうに頷く。

アリスの衣装も可愛いけど…

「咲姫はアリスよりチェシャ猫だと思うけどな」

「え?」

俺の言葉に、咲姫が不思議そうな顔をした。

「だって仔猫ちゃんだろ?」

ふわふわしてて愛嬌のある仕草。

なついたと思ったらそっけなくなるところ。

やっぱり、咲姫は“猫”がピッタリだ。

「………」

笑って言った俺を、咲姫は黙ったまま見つめている。

その瞳は、何か言いたそうで、どこか悲しげで。

切なそうな表情に、思わずドキッとした。

もし今、俺が「好きだ」って言ったら……咲姫はなんて答える?

そう思って口を開きかけたとき、

「日生くん!」

少し離れたところから、俺の名前が聞こえた。

「さっき、伊吹ちゃんが日生くんのこと教室に呼びに行ったの」

ハッとした様に咲姫が言った。

「美原が?」

「うん。日生くんの衣装合わせしたいからって。行き違いになってるから、行ってあげて」

咲姫はそう言うと、気まずそうにそのまま走って行ってしまった。

最近、タイミング悪すぎだな。

ここでホントに気持ちを伝えておけば良かったと後悔することになるなんて、この時は全く思っていなかった。