急な誘いは宗弥のことだからおかしくはないが、一体どこに行くつもりなのだろう。
歩いている最中にはいつもうるさい宗弥だが、今日は心配になるくらい静かだった。
普段ならずっと話しかけてきたり、鼻歌を歌ったり、辺りをきょろきょろ見渡したり…。そんな宗弥なのに。
今日は静かだが、辺りを見渡しているのは変わりない。
「…なあ、どこに行くつもりなんだ?」
俺はそんな宗弥に声をかけてみた。
すると辺りを見渡していた目が俺を捉える。
「んー、どこでも?」
…なんで疑問形なんだ。
誘っておいて、目的は特に決まっていないということか?ただ暇だった?
「じゃあなんで誘ったんだよ。」
「暇だったから。」
さっきの曖昧な返事に比べて即答だった。
予想的中だ。なんだよ、ただ暇だっただけかよ。
「はあ…それで、行き先は決まっていないのにどうするんだ。」
つい溜息を吐いてしまう。溜息も何度目だろう。今日は駆けたり、溜息を吐いたり大変だな。
「そうだなぁ、陣は行きたいところとかないの?」
「俺が?」
「だって遊びに行くとなると、いつも俺が行きたいところだろ?」
「そうだけど…」
「こういう時こそ、陣が行きたい場所に行こうぜ、な!」
そんな元気に言われても。
俺の行きたいところか…。今はもう北海道のことで頭がいっぱいなんだよな。他に、特には思いつかない。
「特にないな。」
「困ったなー。」
「宗弥が行きたいところでいいよ。」
「特に思いつかないんだって。」
「…」
沈黙になってしまった。特に思いつかないって、宗弥の奴…本当に何も考えていなかったんだな。

俺は考えてみる。
そういえば最近、市外だが大きなショッピングモールが出来たと聞いた。
そこなら、俺たちでも楽しめるんじゃないか?
「そうだ、市外だけどショッピングモールが出来たよな。そこでいいんじゃないか?」
「確かに、ナイスアイデア!」
普段なら、計画をきちんと立てて出かけたい俺だが、宗弥となら計画は何も立てずに突然出かけるのも楽しいと感じる。
ただ…、誘いに来て行きたいところは特にないと言われると困るが。

「じゃあ、そこに行こう。」
「電車の時間見てみるか。」
そう言って宗弥はスマホを開き始めた。そのスマホを、俺も覗き込んだ。