ああ、まさか無料で貰ってしまうなんて。やっぱり少しでも払えば良かったかな…。
本を抱えながら、朝通った同じ道を歩いていく。
家に帰ったら読んでみよう。

それにしても、店主すらわからないくらい前の本ってことだよな?どのくらい昔の本なんだろう。
そう思って本の奥付のページを開く。
「…え?」
この本は、俺が思っている以上にずっと昔のものだった。
_1924年4月19日
「今からちょうど、100年前じゃないか」
100年前といえば大正時代末期だろう、こんな昔の本を無料で貰ってしまったなんて。
あの本屋にいつから置いてあるのかはわからないが、本自体は100年も前に出版されたものだ。
1924年に発行された本といえば、有名な宮沢賢治の"注文の多い料理店"がある。
そんな頃と同じ年に発行された本だと知り、よりこの本の貴重さを実感する。
「…とりあえず、家に帰ろう」

帰って本を読んでみよう。大正時代に書かれた本なんて、どんな話なんだろうか。
やっぱり戦争の話だろうか…。対照にミステリー小説や恋愛小説でも面白そうだな。

俺はいつもより少し、発溂(はつらつ)とした表情で家に向かった。