「_…じん……陣!」
俺の名前を呼ぶ、聞き覚えのある声。肩を叩かれる感覚。
目を開けると、宗弥が俺の名前を呼びながら肩を叩いていた。
電車の窓から差し込む、眩しい太陽の光に目をやられる。
「ん…着いたのか。」
「まだ。でももう着くぞ。」
「ん…」
適当に返事をして、まだ眠い目を擦り、もう一度目を閉じる。
「おーい!また寝ちゃったら置いていくぞ!」
「寝ないから…」
「陣はいつもそう言って寝るだろ。…ほら、店のホームページでも見てたら?」
「…見る。」
宗弥が貸してくれたスマホを見る。新しいショッピングモールのホームページだった。
本屋が載っているページを見ると、詳しいことが書かれていた。

「へぇ、こんなにデカいのか。」
「んー?」
宗弥がスマホを覗いてくる。
「ほら、宮城では一番らしいぞ。」
「うわ、本当だ。」
「これなら欲しい本もたくさん見つかりそうだな。」
「ふーん。」
本にあまり興味はない宗弥は、適当に返事をしてすぐに視線を外した。
ゲーセンのホームページもあるのだろうか。探してみよう。

探してみると、やはりあった。
「宗弥、ゲーセンのホームページもあったぞ。」
「お、本当だ!」
あからさまにテンションが上がる宗弥。興味があるものにはとことん興味を示して、あまり興味がないものは全く気にもしない。
そこは俺と宗弥の唯一の共通点だ。
興味があるものや好きなものにはとことん奥深くまで知り尽くし、関心が次から次へ湧き上がる。
そんなところは長所と言っていいだろう。
だが、興味がないものには全く関心が湧かずに寸時も集中が続かないことは短所だ。
だから、好きなことや興味、関心があるものを極めようと思った。
学者や研究者は、俺にとって憧れであり眩しく感じる。

「え、これって最新のクレームゲームか!」
「こんなものまで出ているのか…」
クレームゲームといえば、ボタンを押して操作をするものがほとんどだと思うが、最新の機器ではタッチパネルで操作するものもあるらしい。こういったものを見ると、毎度、時代の変貌ぶりと近代の技術に驚かされる。
「なんか、今の時代って感じがする。昔の人が今の社会を見たらどう思うんだろうな。」
「そりゃあ、失神しちゃうだろ。」
「…」
ふざけているような返答だが、実際にあり得る気がして否定できない。
昔と今。時代はずっと進化を遂げているため必然的に変わっていくだろうが、数十年で多くのことが変わる。
昔の人が見たらきっと、夢のような…いや、夢にすら見なかった世界なんだろうな。

「そうだ!ゲーセンに行ったらプリクラ撮ろうぜ!」
「え…」
別に写真を撮ることは嫌いじゃないが、あの雰囲気が少し俺の性格には合わない。
宗弥のような、陽キャと呼ばれる人たちにはいいかもしれないが、俺にとっては…。
「いいだろ、な!」
「…分かったよ。」
宗弥が輝かしい笑顔で言ってくるものだから、断れずに渋々了承する。
雰囲気に追いつけなくても、宗弥がどうにかしてくれるだろう。

_次はー、仙台駅ー。
「お、もう着くな。」
「降りる準備でもするか。」
そう言って俺たちは立ち上がり、鞄を背負い直す。
電車が停まるまで、ドアの近くに立ち外の景色を眺めていた。