完璧御曹司の溺愛



 悠斗の指が伸びてくる。


 頬に触れられる。


 そう感じ取った理央の体は、喜びを感じていた。


 感極まって泣いてしまいそうなのを、グッと堪えた。



 触れて欲しい。


 髪だけじゃなくて、頬や唇にも……。


 正直な想いが胸を熱くした。


 けれど、悠斗の指は宙を彷徨うように動かした後、理央に触れては来なかった。


 絶望的な気持ちになった。


 理央が期待して悠斗が裏切るなんて事は、今まで一度だってなかったからだ。


 悠斗はいつだって、理央の想像を遥かに超えるような情熱的な触れ方をしてきた。


 戸惑いながらも、そんな悠斗の気持ちが素直に嬉しかった。


 でも今は、悠斗のその気持ちが後退して、理央の気持ちの方が勝ってしまったような…。


 自分だけが、情熱に身を焦がしているような……。


「理央、どいてくれなきゃ動けないよ?」


 優しい声はいつもと変わらない、それなのにどうして?


 家の前で、理央に触れようとしてやめた、あの時感じた違和感を、理央は再び感じていた。



「悠斗、どうして私を避けるの?」