完璧御曹司の溺愛





 何も言えない理央の肩を優しく押すようにして、悠斗が半身を起こす。


 理央と悠斗がベッドの上で、座ったまま向かい合うようになった時、理央は自分の髪が突っ張ったような感じがした。


「っ……」


 悠斗のシャツのボタンに、理央の髪が数本引っかかっている。


「あ、今取ってあげる」


 悠斗が自分のシャツのボタンから丁寧に、からまった理央の髪を解いていく。


 理央はその間、俯いてジッとしていた。


 まるで、今の自分の気持ちが髪に伝わったよう。


 本当は、悠斗から離れたくない。


「ごめんね。俺が無理やり抱きしめたからだ…」


 悠斗は謝る。


 謝る必要なんてないのに…。


 こうされるのは嫌じゃないって、そう伝えたはずなのに……。



 しばらくして「とれたよ…」と言う声。


「良かった。傷んでないみたいだ」と、悠斗は理央のその髪を確認しながら言った。


 髪にも神経って通っているのかな?


 通っているのなら、このドキドキを伝えて欲しい。


 悠斗に触れられて、今にも破裂しそうな心音を聞いて欲しい…。


 目をギュッとつぶっていると、動かない理央を不思議に思ったのか「理央?」と声をかけられた。

 
 悠斗は、自分の前から、なかなか動こうとしない理央を見つめている。