3人での夕食が始まった。
「どう?悠斗君のお口にあうかしら?」と、さっそく涼子の質問が悠斗に飛ぶ。
「えぇ。とても美味しいです」
「あら?気を遣わなくても、本当の事言ってもいいのよ?」と、予想通りの答えを返す悠斗に、涼子は少し意地悪な事を言った。
悠斗は、嘘やお世辞の感じられない、真っ直ぐな笑みを浮かべる。
「いえ、本当に美味しいですよ?今まで食べたカレーの中で一番です」
涼子が理央に「良かったわね」と言うのを見て、悠斗は不思議そうに首を傾けた。
「あ、悠斗君、このカレーね、最初から最後まで理央の手作りなの」
「理央の?」
「えぇ。私が電話してる間に理央が全部作っちゃったの。だから、私が作ったのはこのサラダだけよ」
「そうなんだ……」と、悠斗は自分の手元にあるカレーをジッと見つめたので、理央は照れくさくなった。
「そ、そんな大層な物じゃないから!カレーなんて、結構簡単に作れるんだし!」
「また、そんな事言って。他の料理だって上手じゃない」と、謙遜する理央に、涼子は口を出す。
「理央、料理が得意なの?」
「えぇ。昔から私が仕事で家をあける事が多かったせいで、小さい頃から何でも一人で作っちゃうのよ?この子、私よりもレシピを沢山知ってるの」と、涼子は、黙っている理央の代わりに答えた。
「へぇ、凄いな…」
悠斗の理央に向ける眼差しが、尊敬のようなものに変わったので、理央は更に恥ずかしくなる。
「そ、そんな感心するような事じゃないから…」
「いや、料理の出来ない人間からすると、本当に凄いと思うよ」
「悠斗は料理出来ないの?」
「うん。全くね」
「でも、家に作ってくれる人はいるんでしょう?」
「専属の料理人なら来てるよ。だけど、料理を教えてくれる訳じゃないから」
