「三春ちゃん、色々ありがとう…」
理央は気分が落ち着くまで、保健室のソファでお世話になっていた。
「もう、大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫」
「いつもそう言って、大丈夫そうじゃないのがお前だけどな」
理央の向かい側で自分の椅子に腰かけている三春は、苦笑しながら言った。
「三春ちゃん、今日の理科室での出来事は、悠斗に内緒にしててくれる?」
両方の手のひらを合わせて、理央は懇願する
「それはもちろんだが。お前、この後、どうするつもりだ?」
三春には、自分と悠斗がこの先、兄妹になるという事実を、さっき話したばかりだった。
でも、悠斗への気持ちをきちんと自覚した、理央の答えは決まっている。
「次、悠斗に会った時、ちゃんと私から告白する」
「そうか、本当にそれでいいのか?」
「うん。決めたの」
この気持ちをもう隠すつもりはない。
母や秀和の事が、頭に浮かばないわけではなかったけれど、それ以上に、悠斗にこの気持ちを早く届けたかった。
けれど、悠斗が帰るのは二週間後。
それまで、この気持ちは大切に温めておこう。
悠斗への愛しさを募らせながら、悠斗の帰りを待つ日々、それは、幸福以外の何ものでもないと理央は思う。
これが、人に恋をする気持ち。
こんな満ち足りた気持ち、生まれて始めてだ。
「桜井、幸せそうだな」
三春は理央の前で、自分の事のようにニコリと笑っている。
