遥は腕を組みながら、苛立ちを隠しきれないように、理央を上から下までジロジロと、値踏みするように見つめてきた。
「本当、信じられない。先輩は私が狙ってたのに!」
奥歯をギリリと噛みながら、遥はそう言って理央を睨みつける。
「一体、どんな手を使ったの?あんたみたいな地味で色気もないような子が。まさか、泣きおとした?」
「……私、悠斗にそんな事しない」
理央が冷静に、悠斗を呼び捨てにした事が、更に勘に触ったようで、遥は丁寧に手入れされた眉をつりあげた。
「悠斗?年下なのに先輩を呼び捨てにするなんて、ずいぶん馴れ馴れしいよね!」
「何とでも言えばいい。私の事が気に入らないなら好きにしていいよ」
「はぁっ!?」
今にも理央に噛みついてきそうなくらい遥は怒っていた。
でも理央の方も、この間みたいに、何も言い返せずに倒れるつもりはなかった。
昨夜、悠斗は、理央が妹になると知っていても、誠実に告白をしてくれた。
ここで怯んでしまったら、そんな悠斗の気持ちから、逃げ出す事になるような気がしたからだ。
