しばらく沈黙が流れた。
そして「はぁ…」と、悠斗の深いため息が、電話の向こうから流れてくる。
「悠斗?」
「理央も、アメリカに連れてこれば良かった…」
悠斗からポロリとこぼれた本音に、理央は焦った。
「えっ」
「今、全力で後悔してる…」
「ゆ、裕太は、また私をからかって遊んでるだけだよっ…!」
「本当にそうかな?」
「え…」
「俺も男だから分かるよ。今日やっと、自分の本当の気持ちに気が付いたってところかな…」
「そ、そんなふうに見えなかった…」
「理央のそういうところが、ものすごく心配」と、悠斗は電話の向こう側で二度目のため息。
「…困ったな。理央を学校に行かせたくなくなった…」
「でも、それはさすがに…」
「うん。分かってるけどね……」と、悠斗は自分に言い聞かせるように言う。
「他には?どこか、触られたりした?」
「……っ」
す、鋭い…。
「触られたの?」
「う…うん、腕、掴まれた…」
また、沈黙だ…。
「でも、すぐ離したし、う、腕だから…っ」
「腕だって、どこだって妬けるな…」と、悠斗はあっさり嫉妬を認める。
「理央は可愛いんだから、もっと自覚して?」
「…私、自分が可愛いいなんて今まで一度も思ったことない。だから、自覚なんて…」
「そんなことない。理央は自分で思ってるよりもずっと可愛い。でもそれは、俺にだけ可愛い理央でいてくれればいい」
悠斗の素直なセリフに、身体がジワジワと火照ってくる。
そんな事、言われ慣れてない理央は、戸惑ってばかりだ。
「ゆ、悠斗?」
「ん?」
「どうして悠斗は、そういうセリフ、普通に言えちゃうの?」
すると、悠斗はクスクスと笑い始めた。
なかなか収まらない悠斗の笑い声に、理央は首をひねる。
