「今から仕事だから、もう少ししたら親父に呼ばれる。そしたら行かなくちゃならないけど…」
「そっか…」
「でも、少しだけでも理央の声が聞きたくて」
ここに、悠斗の姿は見えない。
体温も匂いもない、伝わるのは言葉だけなのに理央の胸をキュンとはじけた。
「今日は?学校には行った?」
「うん、行ったよ。そしたら、悠斗がいなくて…」
さっそく、悠斗の話を切り出してしまった。
これじゃあ、悠斗に会いたくて仕方がなかったみたい…。
「ごめんね。急にアメリカに行くって昨日、帰りの車の中で聞かされて、そのまますぐに飛行機に乗せられたから」
「そうだったの…」
「もしかして、俺がいなくて淋しいって思ってくれてた?」
「え?」
悠斗のストレートな質問の返答に一瞬止まったが、誤魔化しようもないくらい、理央の答えならはっきり出ていた。
その気持ちを、電話なら素直に悠斗に伝える事が出来た。
「…うん。すごく、淋しかったよ…」
でも、恥ずかしくて小声になった。
「本当に?理央、可愛いな…」と嬉しそうな声が返ってきて、更に恥ずかしくなる。
