恋とか愛とか、今まで誰とも意識した事がない理央だったが、裕太にそう言われた時は素直に嬉しかった。

 中学時代は思春期で、裕太からずっと避けるような態度をとられていたからかもしれない。

 それなのに、今またその時に戻ったような冷たい態度で、理央を見据える裕太。


『早くどっか行けば?』と、その瞳が語っている。


「あぁ、今は幼なじみじゃないんだっけ?二人は付き合ってるんだったよね?」と、遥は赤い唇の端を、嫌味なくらい吊り上げた。


「やめろって。幼なじみ以下だし。こんな奴」


「えっ…」


 低く冷淡なその声は、聞き漏らしようもないくらい、真っ直ぐに理央の耳を貫いていった。


「ただの幼なじみってだけで、説教じみた事言いやがって。うんざりなんだよな!マジで!」


 ハッと笑いながら、裕太の顔は見たことのないくらいに歪む。

 
 学校一のモテ男と言われている顔が、いや、泣き虫だった幼なじみの顔が、自分に対してこんなにも醜悪に歪む事が信じられなくて、理央の身体にゾワゾワと悪寒が走る。


 う、うそだよね…。

 裕太が私をがそんなふうに思ってるなんて…。


「うわっ、ひどぉい…裕太…」


 遥は腕を組みながら、機嫌が良さそうにクスクスと笑った。