悠斗くらい勇気があったら、咲ちゃんに言われる前に、あの女の子の集団に突っ込んでいきたかったよ……。
理央はジッと、悠斗を見上げた。
「理央、どうしたの?」と、悠斗がすぐに気がつく。
「悠斗は、私を嫉妬させたいんでしょ?一体、何をする気なの…?」
悠斗みたいな人気者に積極的になられたら、私、これからどうしたらいいの?
すると、悠斗がフフッと声に出して笑った。
「ごめん、ごめん。冗談だよ。だから、そんなに可愛い顔で俺を睨まないで?」
「……本当に、冗談?」
「うん。本当だよ?嫉妬なんて、醜い感情を抱くのは俺だけで十分だから…」
「醜くなんてないよ。悠斗はいつも、純粋で誠実だよ」
「それはね、理央に嫌われたくないからそう見せてるだけ。腹の中はいつも、ドロドロなんだ」
「ドロドロ?」
「そう、ドロドロ」
いとも爽やかな笑顔で言ってのける悠斗。
でも、分かる気がした。
私だって、口に出さないだけでその感情を隠してるから。
真っ黒で醜い、感情の塊を。
「でもね、理央には分からないかもしれないけど、沢山嫉妬した後ってね、いつも以上に相手を求めたくなる。自分だけの物だって強く認識したくなる」
「こんなふうに…」と、悠斗は理央をもう一度胸に抱いた。
今度は、離さないと言うように、隙間なくぎゅっと、身体を抱きしめられた。
長い腕に抱かれながら、悠斗の胸に顔を埋める。
この力強い腕も、この温かい胸も、この甘い囁きも、食堂で悠斗の側にいたあの女の子達は知らない。
あの子達がいくら求めても叶わない。
ここは、理央だけが独占を許される唯一の場所____
