いつの間にか悠斗の表情は、余裕のある笑顔から厳しいものへと変わっていた。

 
 その空気を感じ取った裕太は、観念したように言った。


「…次は俺、あんたに殺されるかもな」


「本当にそうなりたくないなら、今のうちに俺と理央の前から消えてくれる?」


 殺伐とした空気が流れる。

 緩やかな昼の日差しがさす、学園の食堂とは思えない。




「女の子をあんなに真剣にかばってる瀬戸先輩、初めて見た〜」


「ねぇ、ねぇ、もしかして瀬戸先輩って、桜井さんの事好きなのかな〜?」


「もう付き合ってるとか?ヤバい、聞いてみたーい」


 ふと、周りからそんな囁き声が聞こえてきたが、悠斗は何も答えなかった。


 ここで、堂々と恋人宣言するわけにはいかない事は分かっている。


 近い将来、理央の名字は瀬戸となって、皆の前では兄妹と認識されるのだから。
 


 ズキンと胸が痛む。

 
 けれど、それで構わない。


 この痛みも覚悟の上で、私は悠斗と共になる事を選んだ。


 その時ちょうど、お昼休み終了のチャイムが流れてくる。


「あ〜ぁ、昼食いそびれた。俺、帰るわ」


 裕太は気怠げにそう言って、背中を向け、食堂を後にした。