完璧御曹司の溺愛



「つーか俺は、まだお前を諦めるつもりはねーからな…」


「えっ…」


 さすがにもう、自分には近付いて来ないだろうと思っていた理央は、裕太の宣言するような一言に面食らった。


「やっと、気がついた時には手遅れで、はい、分かりましたって割り切れる程、俺、諦め良くねぇし…」


 そのセリフに、咲が驚きに目を丸くする。


「は?あんたって、もしかして本当に理央の事が好きなの?」


「あぁ、そうだよ」


「じゃあ理科室で、何であんな酷い事言ったの?」


「うるせーな。気がついたの割と最近なんだよ!」


「ふぅん…」と、咲は、裕太と悠斗を交互に見やり、深いため息をついた。


「悪い事言わないからやめとけば?だってあんたのライバル、あそこで大勢の女の子に囲まれてる、超モテ男なんだし?」


「だから?」と、裕太はまるで、何も気にしてないかのように笑みを浮かべる。
 

「そんなの奪えばいいだろ?ここでこいつが一人でいる事が、むしろチャンスだろ?」


 その時だった。後ろから「あっ、裕太だ!」と甲高い声。


 振り返ると、見た目派手そうな二人組の女子が立っている。


「裕太、最近どうしてるのぉ?全然連絡くれないからつまんな〜い」


「ねぇ裕太、お昼もう食べた?まだなら、食べるの付き添ってあげよっかぁ?」

  
「いい。お前らもう、俺につきまとうな!」


 裕太が面倒くさそうにシッシッと手を振って、あしらう。 


「えぇっ、ひどぉい!何でそんな事言うのぉ?」


「好きな奴ができた」


「えっ、好きな人?ねぇ、それってさぁ、私の事だよね?この前、好きって言ってくれたし?」


「私にも言ってくれたじゃん?俺にはお前だけだって!」


 咲が額に手を当てながら「はぁぁ〜」と、分かりやすくため息をついた。


「悪いけど、俺が本気で好きなのはこいつだから」と、理央は突然、裕太に肩を掴まれた


「あ……」


 そのまま、ぐっと裕太に引き寄せられてしまい、あっという間に裕太の胸の中。


 二人組から、悲鳴のような声が飛ぶ。


「ゆ、裕太っ!離してっ!」と、理央は必死になった。


「やだね」


 裕太が余裕そうに、ベッと舌をつき出す。


「な、何でこんな事するの!?」


「また、言わせたいのか?懲りないやつ」


「そ、そうじゃなくてっ」


「じゃ、何だよ?」



「ちょっと、裕太、いい加減にしなさいって!」と、咲が腰に手を当てて叫んだ時だった。





「ねぇ、何してるの?」




 理央と裕太と咲の前に現れて、ニッコリ微笑んでいたのは、いつの間にか移動してきていた悠斗だった____