記憶を求めて、触れた優しさ。


私は手を振りほどいた。

「もう忘れたなんて言わせないからな、名前ぐらい何度でも言ってやる!俺はお前の幼なじみの古賀秀一だ」

古賀秀一。

何度も言われればそれは覚えるのは確か。

でも前にどうやって話してたかなんて全く思い出せない。

私は、本当にこの人が幼なじみなの?

「あなた、そんな態度で私と今まで接してたの?」

「違……それは、芹那が知らない人みたいに話しかけるからだ、なんでこうなったんだよ……なぁ、芹那…思い出してくれよ」

「私は、あなたの事なんて1ミリも覚えてないけど、幼なじみだったことは、お母さんたち見ればわかるから、納得はできないけど少しは信じてあげるわ」

「ほんとか?じゃあ、一緒に学校行ってくれるよな?今まで一緒に行ってきたもんな」

「え、それとこれはまた別の話っていうか……」

「幼なじみだから一緒に行ってた、芹那の面倒もお前の母さんから頼まれてんだよ」

「え、お母さんが?なんで……」

お母さんそんなに心配してるの?

だからって知りもしない人に頼らなくてもいいのに。
「俺が幼なじみだからだろ?1番近くで知ってるのは俺だからだ、俺がどれだけ心配してると思ってんだよ芹那」

「知らないわよ……私が教えて欲しいぐらいよ」

「じゃあ俺のこと教えてやるから、今日から記憶戻るまで俺と登下校しろ、約束だ」