車での帰り道、窓を開けて顔を少し外に出して、泣いた。
泣くことしか出来なかった。
秋という季節。
少しひんやりとした風が私の顔に当たって涙を吹き飛ばす。
自分の記憶が無くなるなんて、思ってもなかった。
……古賀秀一?
だれなの?
あなたは、私の何を知ってるの?
分からない、……分からない分からない。
なんで思い出せないの。
家に着いてからも沢山考えた。
いくら考えても、思い出せなかった。
コンコン
私の部屋をノックしたのは、お母さんだった。
「まだ起きてるの、今日はもう寝なさい」
「お母さん……私、おかしくなっちゃったのかな」
「大丈夫よ、すぐに良くなるわ、焦らずに芹那のペースでいいのよ」
「お母さん…ッ…私怖い、知らない自分がいるのが怖いッ……」
「芹那……、大丈夫だから、お母さんがついてるから」
沢山泣いた。
知らない自分の記憶
あなたは何を知ってるの?



