2人で、電車に乗った。

電車に乗ってからは、自然と会話ができた。

「ペンギンいるかな?イルカは?」

水族館の話をした。

記憶のない私にとっては、初めての水族館。

すごく楽しみだったんだ。

記憶を知る手がかりを探るために行くのが理由だけど、男の人と2人で出かけることは少し緊張した。

それでも、自分の記憶を取り戻したかったんだ。

水族館についてから、チケットを買った。

「大人2人分ですね、こちらチケットとなります」

私たちは水族館に入った。

見覚えのない水族館、本当は見たことあるはずなのに。

「芹那?今日はさ、水族館に来たことだけを楽しめばいいよ、無理に思い出す必要は無い、それに水族館は小さい頃の出来事だから、思い出せなくてもいい、今楽しめばいい」

「…そっか。楽しめばいいんだ」

「せっかく来たんだから、楽しまなきゃな」

心が楽になった。

思い出さなくても、今を楽しんだらいいって言われて、肩の力が抜けた気がした。