記憶を求めて、触れた優しさ。

なんで私は秀一にお弁当を作ると言ったの?

なんで作ってあげたの?

私の記憶を探るためだ。

「秀一、お願いがあるの、今度は私の話、聞いてくれる?」

「なんだよ、お願いって」

秀一は戸惑った顔をしていた。

「デートしてほしいの」

「……は?……本気じゃないよな」

「なんで分かったの?でもお願い、きいてくれるよね?私の事好きなら。水族館、行こうよ」

「なんでまた水族館なんだよ」

「今日お弁当作ってる時に、お母さんが昔話をしてくれたの」

「昔話?」

「そう、それも秀一の家族と私の家族、2組で水族館に行ったって話」

「あー、昔行ったっけ」

「私は覚えてない!だから、行くの。そこの水族館の記憶もないの、見てみたいの」

「だからってデートしてほしいなんて言わなくても、見てみたいからってそう言えばいいだろ」

「つれないなあ、でも、行くでしょ?知りたいの、秀一と行きたいの、お願い」

顔の前で両手を合わせて、必死にお願いをする。

「……わかったよ。どうしても行きたいんだな、明日、行くか」

「いいの!?」

「ただし、デートって言ったからにはデートらしい服装して来いよ」

「え、なんでそこまで」

「芹那が初めに言ったんだろ?責任持てよ?」

「いじわる」

「期待持たせたのは芹那の方だからな」

「わかったわよ」

でも行ってくれるなら良かった。

秀一じゃないと意味が無いの。

幼い頃、一緒に行った人の中で頼れるのは秀一だけ。

「今度は私が待ってるから、というか家まで行くから」

「隣同士だから、別に来る必要ないだろ」

「いーや、私が行く」

「はいはい」

私は頑固だ。

頑固で強がる、それでいて泣き虫だ。

自分でわかってる。

「じゃあ、また明日!行くからね」

私たちは家に帰った。