記憶を求めて、触れた優しさ。

秀一は、私のお弁当を受け取ると、蓋を開けた。

「どう?美味しそうでしょ?って……あれ、なんで……」

私が驚くのも無理ない。

だって、お弁当の中身がぐちゃぐちゃだったから。

きっと急いだせいだ。

「ごめん、私が食べるから、また作り直すから返して」

そう言って、お弁当を取り返そうとすると、秀一は──

崩れたお弁当の中から、横にあったミートボールでベタベタになった卵焼きをとって、口に入れようとする。

「まって…」

「うまいよ」

秀一は、私の作った卵焼きを食べた。

そして、うまいと褒めた。

「なんで、なんで食べたの」

「芹那が作ったものなら、どんなものでも食うよ」

なんで……。

なんで、そんなことするかなぁ……っ……。

「芹那?なんで泣いて…」

私、泣いてるんだ。

「……嬉しくてっ……作り直すべきだったのに、食べてくれるなんて思ってなかったから、……ぐちゃぐちゃに崩れたお弁当なんて、食べて貰えると思わなかったからっ……」

秀一は、私の頬に流れた涙を手で拭った。

「いくらでも食べてやるから、いいから、もう泣くな」

「……秀一」

秀一は、私を抱き寄せた。

泣き止むまで、ずっと、私を離さなかった。

秀一は優しいんだね、本当に。

心が暖かくなった感じがした。

「ありがとう、秀一……もう大丈夫、ありがとう」

感謝の気持ちを伝えたくて、2度ありがとうと言った。

秀一は、私が泣き止んだあとも、お弁当を食べた。

「美味かった、作ってきてくれると思わなかったけど、ありがとな俺のために」

秀一のため?