記憶を求めて、触れた優しさ。


「危ないッ」

後ろから来た自転車に轢かれないよう、手を引かれた。

ふわりと秀一の体に抱き寄せられた。

いい匂いがした。

見た目よりも体が引き締まってて、触らないと服の上からじゃ分からなかった。

ぺたぺたと触る芹那。

「芹那、芹那……ッ恥ずいからやめて」

自分が夢中になって触ってることに気づかなかった。

「あーごめん、意外だなって思って」

「芹那のこといつでも助けれるように、鍛えてんだよ」

「私のために?」

ちょっとかっこいいって思っちゃったじゃん。

いけない、ただの幼なじみなんだから。

記憶無くす前の私がそう言ったんでしょ?

そうなんだよ。

私を信じなさい。

「明日、待ってるからあの公園で」


秀一はそう言い残して、家に帰った。

私も自分の家に帰ることにした。

「……ただいま」

この家に帰ると息が詰まるんだ。

「おかえり芹那。どうだった?学校は」

心配性の母親。

心配したって私の記憶はすぐには戻らないのに。

「クラスの子たち、全員分からなかった、自分の席も」

「クラスの子まで?そっか……何も出来なくてごめんね、お母さん失格だね」

「お母さんのせいじゃないよ」

「ごめんね、ごめんッ……」


お母さんは泣き虫だ、私と同じ。