記憶を求めて、触れた優しさ。



授業も全て終わって、一人で帰ろうとする。

「芹那まって、一緒に帰る約束」

後ろから声をかけたのは秀一。

振り返りながら芹那は思った。

そうだった、秀一と一緒に帰るんだった。

変な噂たったらどうするの?

でも、私たちの噂というよりは、今日一日私の記憶喪失の話で持ち切りだった。

私たちは歩いて一緒に帰り始めた。

「芹那、俺の事知りたくなった?」

「何者なのよ」

私の知らないことばかりで、嫌になる。

「芹那のただの幼なじみだけど?」

「ただのって、そんなわけないじゃない」

「ただの幼なじみって言ったのは、記憶を無くす前の芹那の方だけどな」

「私が……?」

ただのって何よ。

「そうだよ芹那、自分でそう言ったんだ」

「ただの幼なじみか……」

私がそう言ったんだ。

それなりの理由があっての事だろう。

「明日、13時でいいよな。来てくれるよな?」

「……行くわよ」

あなたを知るためには必要なことな気がするから。