『ごめんなさい。ちゃんとお部屋には戻ります。』


花鈴ちゃんは、きれいな字で書かれたスケッチブックを見せていた。


「夜は冷えるから、一緒に病室に戻ろう。」


口の形で何となく言葉を理解しているのか、彼女は俺の言葉に素直に頷いてくれた。


花鈴ちゃんは、那月が持ってきてくれた車椅子に座り一緒に病室へ戻った。



ベットへ寝かせると、彼女はすぐに深い眠りについていた。



「寝顔はこんなに子供のように和らいでいるのにね…」


那月は、花鈴ちゃんの髪をそっと撫でていた。


「私は、あなたの味方だから…」



「那月…」



「何があったのか分からないけど、この子のこと簡単に警察官に引き渡したらダメよ。


こんなに綺麗な瞳を持つこの子が犯罪を犯すわけがないじゃない。


もし、人に危害を加えてしまったというならきっとそれは誰かを守るためだったのかもしれないわよ…」



「…分かってる。俺もそう見てる…。俺も、彼女のことを警察官に引き渡したりはしない。


俺は、花鈴ちゃんのことを守り抜いてみせるから。」



彼女に何があったのかは、真実は彼女にしか分からない。



感情を失い、何も話そうとしない彼女のことを知りたい。


那月も、花鈴ちゃんのことを考えてくれているんだな…


それから、俺は花鈴ちゃんの病室で一晩過ごした。