「この学校の七不思議の中には人骨模型が夜に理科室を抜け出すというのがあるんだけど、数ヶ月前にここを守衛さんが辞めてしまったんだけど……理由は夜遅くに音楽室に明かりがついていたから見に行ったら人骨模型が踊っていたんですって……だからそれが怖くて辞めたんじゃないかって」

 とクラスメイトたちは震え上がる。希菜子も怖いねーと言うと葵はため息をついている。

「まずもって人骨標本の入ってるところは確か鍵がかかってるよね。昔生徒がいたずらで肝試しやってて使って壊して。あれってひとつ五万近くもするのよ
「でも鍵があれば誰でも……」
 葵は首を振る。

「そう生徒は簡単に鍵を借りれない。職員室まで行かないとね」
「そうよね、先生しか取り出せない……理科の御嵩先生? 使った後は模型を丁寧に拭いてるし」
 再び葵は首を横に振る。

「前回の人骨模型の損失で理科室の責任者として警告を受けたわけただろうし、丁寧に拭いていたのも高額な器具だから。次壊したりでもしたら責任者として弁償とか言われたんでしょうね」
 と葵が言う。

「さすが。じゃあ葵、他に何が考えられる? 鍵かかってたら人骨模型も出られない。確実に誰かが鍵を開けた可能性はある。そしてちゃんと鍵をかけ閉めている」
 希菜子も前のめりで聞いてくる。葵はそうだなぁと考えている。
 クラスメイトはキョロキョロ見渡して高橋先生が違う生徒に指導しているのを確認して小さい声で言った。

「高橋先生は? あの人は教師の前は画家もしてて作風はあのモノトーンな身なりからわかるけど髑髏モチーフなの!!」

 と美術室に飾られている高橋先生の作品を葵は見る。確かに髑髏がモチーフとなっている。おぞましくて高校の美術室にふさわしいものではないが芸術的には素晴らしい、と校長は褒め称えていた。
 一部の生徒たちには不評だが、絵心のない葵にはすごいなぁと思うのであった。

「だと言ってもわざわざ鍵がかかってる棚の鍵を借りてまで描こうとは思わないだろうし、それに髑髏をモチーフにした作品の作者名……舘彩子《たてあやこ》、彼女の旧姓。だが結婚してお子さんができてからは同じモノトーンだけど髑髏モチーフでは無くなった。あと忙しさから作品数は少ない……それらは全部今の高橋姓」

「それは気づかなかったー。じゃあ今は髑髏モチーフ描いてないから人骨模型は御用なしね。じゃあ高橋先生は無し……やっぱり七不思議の一つ、人骨模型が毎晩動き出す……オバケの仕業かしら」
 葵はやれやれと笑っている。