蝶と柊 ~冷たくて甘い君~




言われてハッとなり、慌ててバッグの中をガサゴソと漁ってみるも、



「ない……」



家に忘れてきちゃったのかな。



昨日の一件から携帯はなんだか気分になれなくて触っていなかったし、今朝もバタバタしててそんな暇なかった。



そのせいで凪沙に迷惑と心配をかけちゃった…



「家に携帯忘れて来ちゃって電話出れなかったみたい、心配かけてごめんね」



首を横にブンブン振って、



「凪沙が無事ならそれでいいの」



安心した柔らかな表情でそう言った。



そのまま、流れで私の隣の席に座る凪沙。



すると、ちょうど担任の先生が入ってきて朝礼が始まった。



よく考えれば、私が遅刻ギリギリってダッシュしてきたのに、



それより後に来た凪沙は本当に遅刻しちゃいそうなギリギリの時間まで私に電話してくれてたってことだよね。



尚更申し訳なくなってくる。