警察の尋問に対し、ももちゃんは否定を続けた。

「ですから、ひったくりにあったおばあさんがお嬢さんに助けられたと仰ってまして……」

「私じゃないです。絶対に知りません」

 警察もももちゃんも、互いに困っていた。

 ハンドバッグを奪われそうになったおばあさんは涙を流してももちゃんに感謝をしている。

 一方ひったくり犯は、「何だかよく分からないうちに人生で一番酷い目に遭った。とにかく怖い。反省している。もうしません」と涙を流して供述している。

「なあ、なんつーかこのままだと、ももちゃんが身に覚えのない感謝状をもらう的な展開にならねえ?」

 関は心配したが、

「辞退もできるだろうし、この場合真相は別にどうでも良いだろう」

 と有誠はきっぱりと言った。

 おばあさんのすぐ後ろを歩いていたももちゃんは自転車に乗ったひったくり犯を見て、「泥棒!」と叫ぶと走って追いかけようとした。

 このままではももちゃんが犯人に襲われかねないと判断した有誠はすぐさま犯人を気絶させ、一瞬のうちに姿を消した。

 関は現場にいたことはいた。
 でも、どうやって有誠が犯人をのしたのかは全く分からない。有誠は言った。

「理屈じゃない。筋肉だ」

 マッチョな芸能人の日めくりカレンダーに書いてありそうなセリフだった。

「お前さ。極秘の研究機関とかに捕まらないでね」

 友達が有誠しかいない関にとって、それは死活問題なのだ。