ゲーム機は有誠のものではなく、離れて暮らしている有誠の兄が置いて行ったもので、最近はほとんど関が使っている。

 CPU相手に延々とスマブラをやっている関の後ろではフンッ、フンッ、と規則的な呼吸音がしており、部屋には熱気が充満していた。

 ふいに関はコントローラーを置いた。

「友達が来てる時くらい筋トレやめね?」

「サボったらサボった分だけももちゃんを守れる可能性が下がる。ももちゃんを守れなかった時は俺が死ぬ時だ」

 有誠の眼鏡が光ったが、筋トレの時は外して机の上に置いてあるのになぜ光るのか。有誠の魂と連動しているのかも知れないが、真実は定かでない。

「つまんねえなー。一回ぐらい遊んでくれよ」

「一回だな」

 K.O.

 ──何が起きているのか分からないうちに戦いが終わって有誠のマリオが嬉しそうにしていた。

 こんな恐ろしいマリオからどうやってピーチを攫うんだよ、ももちゃんだけに。と関は思った。

 もはや関には、無言でCPUを弄ぶことしかできなかった。

 友達の家に来ているのに、めっちゃ孤独。というか、本当にオレ達は友達だったのだろうか。

 有誠のお母さんが、「あんたお友達が来てる時ぐらい筋トレやめなさい」とかなんとか言いながらお菓子とジュースを持ってきてくれなかったら、画面が涙で滲んでいたかも知れなかった。