「桜山、これはPG-12、保護者の助言と指導があれば12歳未満の年少者の観覧も可の作品だ」

 シネコンの薄暗いロビーで、有誠の眼鏡が光る。

「え、アニメなのに?」
「簡潔な殺傷描写があるようだな」

 有誠が見せたスマホの画面は一般財団法人映画倫理機構、縮めて映倫のサイトだ。

「うーん面白そうだけど、痛そうなのは苦手かも」

「だろう。無難に子供向けアニメならトラウマになる可能性は低いし、大人も充分楽しめる。あとはPG-12指定の理由や体調との相談だな」

「わかった! じゃあこっちにする!」

 ももちゃんは国民的猫型ロボットアニメを指差す。
 お礼を言いながら去っていくももちゃんを眺めながら、関は励ましをこめて有誠の肩を優しく叩いた。

「ももちゃんが友達と観る映画じゃなくて、ももちゃんとお前の二人で観る映画を選べるようになるといいな」

 有誠はすっと眼鏡の位置を直しながら、「俺は別にかまわん」と本気かどうかわからないことを言った。

 その表情に、下心のようなものは見当たらないように思える。

 友人とその幼馴染の関係が何かと気になる関だったが、現状、それ以上のことを聞き出す勇気は無い。