「で、でも……帰るところないんですよね? 野宿なんかしたら、また体調崩しちゃいますよ。心配です!」


すると男の子は何度目かのため息をつきながら、降参したようにこっちを見た。


「お前はどこで寝るの?」

「ソファか床で寝ます!」


「はぁ……なんでそうなんの。ってか、お前もっと自分を大切にしたほうがいいよ」

「どうしてですか?」


「人に尽くすのもいいけど、もっと自分を思いやるのも大事って話」

「誰かのために何かするのが好きなので」


「あー……そう。けど、それも限度ってもんがあるから。ちゃんと覚えとけよ」


そう言って、なぜか玄関のほうへ。


「え、あれ……泊まっていくんじゃ――」

「この服しばらく借りるわ」


右手をひらひら振って、こちらに背中を向けたまま。


「さっき俺が言ったこと、ちゃんと守れよ」


玄関の扉に手をかけて、そのまま出ていってしまった。


慌てて追いかけたけど、すでに男の子の姿はなかった。



満月に照らされた夜空の下で――。

「服従者の素質ありそー……」


彼がそんなことをつぶやいていたのも知らずに。