「お店の人に、実家に帰るために休んだって聞いて……嫌になって地元に戻るのかもと思って……」
居ても立っても居られなくなって、車をかっ飛ばしてきたのだと語った。おいおい仕事はどうしたの?
「今日は別に俺がいなくても回るからいいですよって、柴崎が」
そもそも一人いきなり抜けたくらいで回らなくなるような会社じゃない、と一喝されたのだとか。柴崎さん、お強い。
「嫌いではないんですよ、そういう意味で好きでしたし」
「それなら──」
「でも、あなたの本心がわからなかった」
「あれだけアプローチしてたのにか?」
「物語に浮かされることってあるでしょう」
巫女ヶ浦の伝説然り、二人の悲恋然り、彼は自分たちをなぞらえて、それで躍起になっているだけなんじゃないかと。
自分で自分を騙して植えつけた恋情は、成就した日から崩壊が始まる。相手の欠点が癪に触って、あれだけ好きだったのにと苦しくなる。



