あなたを抱きしめる、唯一の


 私は今、笹山さん、もとい笹栗さんの車に乗っている。

 流れる風景に目をやりながら、怒涛の一日を思い返していた。


「一緒に説明してくれてありがとうございます」


 私がなんとなくそう感謝すれば、彼は目を細めた。


「お礼なんていいよ、俺が蒔いた種だし」

「おかげで母も納得してくれました」


 二人を中へと促してから、彼が抜き打ちチェックの変装について一から説明してくれた。母はさっきの切ない雰囲気はなんだったのかと思うほど呑気に、「ドラマみたいなことってあるのねぇ」と彼からお土産をパクついていた。

 でも、笹栗社長に会わないか、という提案に関しては頑として承諾しなかった。「綺麗なままにしておきたい」というのが理由らしい。そういうものか。

 一連の話し合いが終わり、車に乗せてもらって帰るために乗り込むと、深々とお辞儀をされてしまった。ひどくこそばゆかった。

 そして彼がなぜここに来たのかと言うと。