あなたを抱きしめる、唯一の


「それなら……うん、良かったじゃない」


 翌日、どこか現実感のない心地でロッカールームに入ると、菅野さんを見つけたので聞かれる前に報告してみた。

 そしたらなんとも菅野さんらしくない反応に、私は肩透かしを喰らったような、安心したような気分になる。絶対に根掘り葉掘りされると思っていたのに。


「菅野さんから見てどうでしょう? 危ない感じはしました?」

「いや全然! いい人、だと思うわ、うん」


 歯切れの悪い話し方に、不安ばかりが募ってしまう。菅野さんは視線をあちこちにさまよわせながら、手早く着替えを済ませてしまった。


「ところでさ、笹栗デパートのホームページって見たことある?」


 菅野さんの唐突な質問に面食らうも、私は洗練されたホームページを思い出した。各フロアのご案内くらいしかまともに見ていない。

 それを正直に伝えると、菅野さんはしばらく考え込んでしまった。


「あの、どうしました?」

「え、ああ、平気だから……その、ご挨拶のページ、あるでしょ。時間があれば見てほしいの」